なぜ線から練習するのか
絵のあらゆる形は、結局のところ線と、その線が囲む面でできています。線が揺れたり狙ったところで止まらなかったりすると、形を正しく見ていても紙の上ではずれて見えます。逆に、思った長さと向きで線を引けるようになれば、観察したものを写すのがずっと楽になります。線の練習は退屈に見えますが効果が早く出るほうで、数日続けるだけでも線の揺れが減ってくるのを感じられるはずです。絵の基礎体力だと考えるとよいでしょう。練習にはHBくらいの鉛筆を使い、紙は惜しまず広く使いましょう。小さな枠の中だけで引くと手首しか使わなくなり、腕を使う感覚が育ちません。うまく引けた線と失敗した線をいちいち分けず、一枚をびっしり埋めるつもりで量を増やすほうが、結果的に早く上達します。
手首ではなく腕で引く
字を書くときのように指と手首だけを動かすと、短く曲がった線になります。手首は弧を描いて回るので、長い直線は引きにくいのです。線の長さに合わせて動かす関節を変えるのがコツです。
- 指:ごく短い線と細部の描写
- 手首:手のひらほどの短い線
- ひじ:中くらいの長さの線と小さな円
- 肩:紙を横切る長い線と大きな円
点つなぎと空中でのなぞり
いちばん効果的な直線の練習は、紙に点を二つ打ってその間を結ぶことです。すぐに引かず、鉛筆を紙から少し浮かせたまま同じ道筋を空中で二、三回なぞり、目は終点を見ながら一度で引きます。こうすると手が道筋を先に覚えるので、線がまっすぐになり、終わりも正確になります。最初は点からはみ出してもかまいません。少し速く引くほうがかえって線はまっすぐになります。ゆっくり引くと手の細かな震えがそのまま線に残るからです。慣れてきたら、同じ間隔の平行線を密に引く練習に進みます。これが後で陰影を重ねるハッチングの土台になります。
円とだ円
円は一度で完璧に描こうとせず、同じ場所で軽く何周も回してから、いちばん丸い道筋を濃く整えます。円を斜めから見るとだ円になり、円柱の上面やコップの口、車輪のように、絵には非常によく出てきます。だ円には長軸と短軸があり、二つの軸は直角に交わり、だ円は両軸を基準に上下も左右も対称です。だ円の両端をとがらせてしまう失敗がよくありますが、だ円の端はいつも丸くつながっています。円柱を描くときは、円柱の中心軸がだ円の短軸と同じ向きになるようにそろえると、形がねじれて見えません。
物を基本の立体に置き換える
複雑に見える物も、箱、円柱、球、円すいを組み合わせればたいてい説明できます。本や携帯電話や建物は箱、コップや瓶や木の幹は円柱、果物や頭は球、じょうごやとんがり帽子は円すいから始まります。描く前に対象を見て、どの立体の組み合わせかを先に言葉にしてみる習慣をつけると、細部にとらわれずに大きな形からとらえられます。箱を描くときは、見えない奥の辺まで軽く描いてみる練習が特に役立ちます。隠れた線を描くと面と面のつながり方がわかり、遠近がずれているところもすぐに見えてきます。
一日十五分の練習手順
次の手順をタイマーで時間を区切って行えば、毎日同じ量を続けられます。最初の一週間はこれだけで十分です。二週目からは、最後の六分を机の上の実物を基本の立体に置き換えて描く時間にしてみてください。
- 三分:二つの点を結ぶ直線を、いろいろな向きで
- 三分:同じ間隔の平行線で面を埋める
- 三分:重ねて回す円と、さまざまな傾きのだ円
- 六分:箱と円柱をいろいろな角度で、隠れた線まで
よくある失敗
線の練習でよく見られる癖と、直す方向です。ひとつずつ意識して描けばすぐに変わります。
- 短い線を何本もつないで毛のような線にする:長さを決めて一度で引く
- ゆっくりすぎる:道筋を覚えてから一定の速さで引く
- 最初から強く押しつける:軽く探して後から濃く整える
- 失敗した線をすぐ消す:残しておき、横に引き直して比べる
- 紙を固定したままにする:引きやすい向きに紙を回してかまわない
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